2005年7月12日火曜日

「沢木耕太郎/バーボン・ストリート」感想

「沢木耕太郎/バーボン・ストリート」(新潮文庫)
以前ある飲み会で初めてあった男性に「沢木耕太郎に似てるって言われません?」って言ったら「沢木って人のことは知らないけど、マイケル富岡には似てると言われる」と返されたけど、その人はなかなかの男前だった。
それで思ったんだけど、僕は沢木耕太郎のことをかなり男前だと思っているわけで、でも彼の写真って新潮文庫の著者近影でしか見たことがないし、それは多分に彼の書く文章から来るイメージなんだろう。


そう、沢木耕太郎は男前の文章を書く。
僕はカシアス内藤(「アリス/チャンピオン」のモデル)を描いた「一瞬の夏」を読んで惚れたんだけど、定番の「深夜特急」は僕が紀行ものが好きじゃないせいで手がのびなかった。
ずっと彼の文章を楽しみたいと思っていたけど、最近になってようやく、植草甚一のことを書いた「ぼくも散歩と古本がすき」が収録されているのがきっかけにこのエッセイ集「バーボン・ストリート」を手にしたのだった。
これが予想以上に面白い。話題のつなげ方とかどれも唸らせられるし、決して格好をつけないのに逆にそれが格好いいというのが、もうお家芸と化している。
それにしてもなんだって沢木耕太郎は各界で一目置かれる人々と交流を持てるんだろう?
それはやはりルポライターとしてのカンのよさなんだろうと思う。たとえば彼が翻訳を担当したロバート・キャパなんかの写真家と同じように、嗅覚のように現場に吸い寄せられていくんだろう。そして逆にそういう人のところへ事件は集まっていくんだろうなぁ。
さて、ここからはやや批判的になってしまうんだけど、この本の中で沢木耕太郎は「映画についての評論といったものを読むたびにつくづく思うのは、こんな難儀な仕事を生業にしなくてよかったということである」と書いているんだけど、先日新潮文庫に入ったので書店で手に取ってみた「シネマと書店とスタジアム」の映画評の凡庸さと来たら……。これについては沢木ファンである弟からも聞いていたものの、ここまでとは思わなかった。なぜ?

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