どっちかというと物語の整合性とかはそれほど気にしない方だと思うんだけど、それは整合性以外の部分が面白ければ、という前提であって、整合性を核にしているミステリだとやたらと気になってしまうからなのかもしれない(というか、たいてい事件の発生の部分にすごいつっこみたくなる。そんなぐらいで殺人しないって、とか)。
ただ、ミステリとは違うけど似た面白さを持つ「時間もの」はけっこう好きなので、ついつい手に取ることがある。これはそんな作品の1つ。
削除ボーイズ0326
方波見 大志

オビの大森望氏の「時間ものにまだこんなすごい奥の手があったなんて……。」ってのがそそるそそる。過去の出来事を3分26秒だけ消せる機械、というのは取り立てて新しいと思わないけど、どういう仕掛けがあるのか期待させる。
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……読んでみたけど、構成はSF的というよりミステリ的だと思う。
時間ものというより、ドラえもんの道具でいうと「どくさいスイッチ」に似てる。タイム・パラドックスの面白さを扱っているわけではない。
また、ホントに好みの問題だけども、トーンがやや暗い。それが小学生を主人公にしているからやや違和感があるのかも。中学生ぐらいに設定してもよかった気もする。
そういう点でいうと、これは僕がもう30越えだから的確な意見かどうか分からないけど、小学六年生というには、主人公や周りの子供のセリフや行動などにやや違和感があった。今の子は小六でblogとかやるもんなんでしょうか?
他に気になった点としては
・核となる「事件」に関して、つっこみどころが多い
・削除装置のルールがやや不明確(兄の事故をああいうオチにするなら、主人公自身の心理的混乱をもっと描いた方がいいのでは??)
など。
子供の心理を描きたいのか・SF的ガジェットを使ったミステリを描きたいのかがやや分からないのが、読んでて消化不良だったかも。どちらも描きたいとしても、軸足をどちらかに決めた方がいいような。
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時間もの、といえばこんなのも読んだ。
イエスタデイ・ワンス・モア〈Part2〉―ミート・ザ・ビートルズ
小林 信彦
前作の「イエスタディ・ワンス・モア」はあんまりな内容に途中でギブアップしたけど、こちらは「ビートルズ来日前夜を描写する」というテーマに惹かれるものがあったので、読了できた。
小林信彦という人は素晴らしい評論家だと思うんだけど、自身の創作はどうもそうならないのが不思議。というか、小説はむしろ下手な部類だと思う(そしてそのことを著者自身がとてもよく分かっていると思う)。
だけど、「夢の砦」(僕はとても好きな作品)とかこの作品のように、自分が偏愛している時代を描かせると、その物語的な面白さではなく、ディティールを積み重ねていくことで浮かび上がってくる「時代の雰囲気」みたいなもので楽しませてくれる。
ちなみにこの本を発端として「ビートルズ論争-Wikipedia」というものがあったそうだけど、その論争自体が実にくだらない。そしてこういう論争をしてしまうところと、小林信彦が描く小説が持つ「面白くなさ」には関連があると思う。
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