2007年1月7日日曜日

一番驚いたのは、著者が宮沢章夫であること

夏休み前に買ったはいいけど、やたらと(物理的に)重い本であったため、自宅でしか読めずに、冬休みを利用してようやく読了。読んだらあっという間だったけど。

東京大学「80年代地下文化論」講義
宮沢 章夫
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これは面白かった!
なにせずっと自分の中で問題にしている、80年代文化における「オタク」(00年代のアキバ系のルーツの1つでもある)と、「ニューウェーブ」的なメンタリティ(90年代の渋谷系のルーツの1つでもある)をどうとらえたらいいのか、ということに関して、がっぷりと取り組んでいるのだ。

あえて「かっこいい」という言葉を軸に、「大塚英志/『おたく』の精神史」を反語的に読む、というテーマで、この80年代当時の「オタク」文化にも「ニューウェーブ」的な文化(本書では「ピテカントロプス・エレクトス」を中心に語っているが)にも両方興味があった自分としては、いろんなヒントをもらえたと思う。

この本を読んで思い出したのは、大学生ぐらいの頃に僕がしきりに「実験的なポップニュージックが好きだ」と言っていたことだ。周りの人には伝わりにくかったんだけど、この本を読むと「保守的な閉塞感を持たない力を持った音楽」ってことを言いたかったのかもしれない。

僕はオタク的な文化は決して嫌いじゃなかったけど、その閉塞感はすごくイヤだったんだと思う。それはたとえば「コミケに集う」てな表層的なことだけじゃなくて、「先がないなぁ」という印象といった方がいい。
そういう意味で、同じ大学生の最終学年に放送された「新世紀エヴァンゲリオン」はまさにその閉塞感もテーマにした作品だったと思うし、あれによってオタク文化も何か変わるかも、と思った。
けれども、その後はむしろより保守化したような気がして、だんだんとそっち方面からは遠ざかるようになり、ハッと気づけば僕が知っていた「オタク」は「おたく」と名を変え、むしろ若者文化においてメジャー化していったような印象すら今ではある。

……などと、書いていくとものすごく長くなりそうなのでこれぐらいでやめておこう。とにかくいろんなことを考え直させてくれる本だ。

今まで80年代を扱った特集というと、当時のレコード紹介、YMO、ファッションブランド、パルコ文化、ニューアカ、ミニシアター、そしてライターなどによる80年代の反省、みたいな構成が多くてもう「80年代特集」とか言われても手に取る気さえなくなってたけど、本書はそういうものとは一線を画する、「考えるための第一歩の足場」を初めて築けた書なんじゃないか。

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