2008年3月10日月曜日

「たるにのるぞう」って……

ファンタジー系RPGに強いゲーム会社で企画職を10年以上勤めてはいるんだけど、実はファンタジーってあんまり思い入れがなくて、その手の小説などはほとんど読んだことはない(仕事がら断片的な知識はあるにはあるんだけども)。

だから「ロード・オブ・ザ・リング」もこれ幸いとばかり3作とも映画館で観たけどそこまでで、とくに原作に手をのばすことはなかった。
もっとも、大長編でかつ海外小説、という僕にとっての二重苦な作品なのでしかたないとも言える。

ハリー・ポッターも最初の学校ものだった頃は好きで、その後小説は4巻ぐらいまでつきあったけどだんだんとシリアスな内容になっていくにつれ興味がなくなって、最近の数冊は全然読んでない。映画も先日最近作をDVDで観たけど正直ストーリーについていけなかった。

という状況ではあったんだけど、前に書いたようにケストナーを数冊読んで翻訳物の児童文学に耐性がついたのと、子供に絵本を読んでやっているうちに少し古くさい文体慣れもしたのとで、こちらを手にしてみた。

ホビットの冒険〈上〉 (岩波少年文庫)
J.R.R. トールキン J.R.R. Tolkien 瀬田 貞二
4001140586


いわずとしれた「指輪物語」の前日譚なんだけど、数年前にすてきな装丁のバージョンが出て

ホビットの冒険 オリジナル版
J. R. R. トールキン 瀬田 貞二
4001156792


それにつられて興味は持っていた。
けど、結局読むのは携帯性にすぐれた新書版というのがちと悲しい。

読み通せるか不安だったんだけど、翻訳文体でしかも古い言い回しが逆に異世界の演出を醸し出してくれて、いい具合に読み進むことができた。
たとえば剣の名前が「つらぬき丸」、主人公が名乗る偽名が「たるにのるぞう」ってかなり笑ったんだけど、これも味といえば味。

でも僕が一番この本を読み進めやすかった点は、主人公ビルボ・バギンズがいやいや冒険をしているところ。なによりもドワーフの宝探しに無理矢理つきあわされる、というのがよい。正義感とかほとんどなくて、ときどきは調子に乗ったりもするけどすぐに家が恋しくなる。その辺の気持ちにリアリティがあってよかった。彼の煙草の煙を見るのや地図が好きで、ごはんやお菓子のことばかり考えている点も愛嬌がある。
またドワーフたちがヒゲにこだわっていたり、それぞれの人種でそれぞれのこだわりやルールがあり、また種族同士に生理的な好き嫌いがあるのもらしくてよかった。

というわけで、思いがけなく楽しめる小説だった。やっぱり名作といわれるだけあるな、と思った。
かといって「指輪物語」に手を出す気はさらさらないのが僕らしいのだが。

映画になるとかで、そちらも楽しみ。

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