2011年2月5日土曜日

ディティール描写からあふれでるアウラ

昨年末から東京がプチ・マイブーム。

以前から文庫になったら即買おう読もうと思っていたこの本を、辛抱たまらず図書館で借りて一気読みしてしまった(こういう、あえて面白そうな単行本を買わず、文庫待ちを楽しみにするということがあるのです)。

東京
坪内 祐三
4778311256


テーマは
後楽園界隈・下北沢・南千住・吉祥寺・原宿/表参道・池袋・中目黒・赤坂・渋谷・渋谷道玄坂・人形町・早稲田・飯田橋・西葛西・芝~東京タワーとプリンスホテル・巣鴨・中野・目白・成城・両国・高田馬場・神保町・経堂

坪内氏のプロフィールは

坪内祐三
 文芸評論家。
 1958年生まれ
 早稲田大学第一文学部卒業、同大学院修士課程修了。
 元・雑誌「東京人」の編集者
 幼少期を世田谷区赤堤で過ごす。

自分より15歳年上でずっと東京育ち・しかもお坊ちゃま(父がダイヤモンド社社長)だったりするけど、偶然、現在の自分が赤堤の近くに住んでいること、同じ大学・学部に通ったこと・学生時代の最寄り駅が坪内氏が働いていた「東京人」編集部があった飯田橋であったことなどなど、起点となる場所に共通点が多いこともあり、身体・精神距離感が非常に共感できた。
たとえば、北千住とか両国の方って確かに「すごく遠い」イメージがある。池袋のイメージもなんとなく分かる。

でも、それは環境的な問題ばかりではなくて、坪内氏の作家性によるものが大きいと思う。
ディティールを慎重に選んで丁寧に描く手法で、その選び方と描写で「アウラ(@坪内氏)」が浮き上がってくるのだ。だから批評とかエッセイなんだけど、読後感は小説のそれに近い、という不思議な感覚になる。

私の体を通り過ぎていった雑誌たち (新潮文庫)
坪内 祐三
4101226326


一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 (文春文庫)
坪内 祐三
4167679795


この感覚を、見た目は全く違うんだけども、イラストレーターのモリナガ・ヨウ氏からも感じる。
同じく絵だけでなく、拾い上げるディティールが素晴らしくて、そもそもディティールと相性のいい模型世界と組み合わせると、それが爆発する。

35分の1スケールの迷宮物語
モリナガ・ヨウ
4499228344


絶版なので図書館で借りたけど、Amazonではプレミア。
彼のプロフィールをメモすると

モリナガ・ヨウ
 イラストレーター。
 1966年生まれ
 早稲田大学教育学部卒業(地理歴史専修)日本現代史を専攻。卒論はジャーナリストの長谷川如是閑。漫画研究会在籍。
 中学までを世田谷区千歳烏山で過ごす。

赤堤と千歳烏山は同じ世田谷区で近いといえば近い(ちょうど僕はこの間ぐらいに住んでいる)。8年という開きがあるものの、同じ大学に通っていたりと環境的共通点は多い。
もっとも、そのこととこの二人に共通する「作家性」はあまり関係がないけど。

先の「35分の1スケールの迷宮物語」はまさに迷宮へと、自らの思い出と共にハマりこむモリナガ氏の姿が面白く・時には鋭い考察を交えながら描かれる。見開き1ページで雑然と書き込まれる字とイラスト、という構成にミニチュア感満載で、ちょっとメタ的ともいえる。

モリナガ氏は同じイラストレーターの「まつやまたかし」さん(元・鳥山明氏のアシスタント)とも通ずるものがあるけど、もっと泥臭くてそこが魅力。

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