2006年4月13日木曜日

2006年4月前半の読書

本の感想、つづき。

「常盤新平/遠いアメリカ」(講談社文庫・絶版)

昭和61年下記直木賞受賞作。
常盤新平は「アメリカの編集者たち」「アメリカン・マガジンの女たち」といったノンフィクションを古本で手に入れたたけど、どうもその文章が好きになれなくて読み終えたことがなかった。
この本は自伝的連作中編小説。図書館で借りたんだけど、青春小説としてはまぁまぁ面白かった(この手の小説が好きなので点は甘いかも)。
田舎出身の大学院生が勉学から離れつつ、アメリカへの憧れから翻訳者を志すのがメインプロットで、それに年下で役者志望のかわいらしいガールフレンドや、厳格だけど主人公を愛する昔気質の父親、田舎しかしらない母親……、などなど脇の人物もしっかり描かれている。

布袋寅泰「秘密」(幻冬舎)
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布袋寅泰の自伝!
最初に書いておくけど、僕は別に彼のファンではない。嫌いでもない。ただ、ギタリストとしてとても面白い人し才能もセンスもある人だとは思っている。

さて真っ先に気になるのは、前妻・山下久美子との離婚のいきさつ。彼女が以前同じ出版社から出した自伝はもちろん読了した。
でも布袋さんは言い訳してない。かっこええわ。

で、次がBOφWY結成と解散のいきさつ。これまた面白い。氷室は根本的なセンスがヤンキー系、布袋はニューウェーブ系で、そもそも嗜好が全然違うんだけど、それがうまく絡み合ってBOφWYが誕生したんだなぁ。布袋のセンスだけでは決して田舎の中学生には受けなかっただろうし。
また「道のハズし方」に一貫して変な美学があるのが彼らしいんだと思う。

最初は図書館で借りれるまでガマンしようと思ったけど、書店で立ち読みしてたら「帰って今すぐ読みてー」と買ってしまい一気に読んだ。プハー、おもしれー。

赤塚不二夫「ボクは落ちこぼれ」ポプラ社
実家の奥様の部屋にあって面白そうだから抜いてきた本。
後半のトキワ荘前後の話は大体知っているのでそれなりに面白かったけど、すごかったのが満州から引き上げてきて貧乏暮らしをせざるをえなかった少年時代の話。時にのぞく赤塚不二夫の残酷というかサーバイヴなテイストってのはこういう経験があったからなんじゃないだろうか。この辺、藤子不二雄2人や石ノ森章太郎は育ちがいいような気がする。ただ、たとえ赤塚のエピソードとしてではなくても、戦後日本の田舎がどんなふうだったかを伝える一つの声として価値のある本だと思った。

トキワ荘でのエピソードでは、石ノ森って赤塚に対してかなり面倒見てたイメージがあったけど、赤塚に言わせれば意外とそうではなく、食事は作らせて一所に食べさせるけどお金は貸さなかったとか。でもこれはきっと赤塚をアシスタント扱いにはしなかった石ノ森の赤塚に対する敬意とも読めるかもしれない。
もう一つ、水野英子が思い切りブサイク扱いされていて面白かった。年下の赤塚に「貴様!」と呼んだ、ってどこまで本当なんだろう(笑)。

ケストナー(池田 香代子訳)「点子ちゃんとアントン」岩波少年文庫
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ケストナーは半年ぐらい前に「飛ぶ教室」を読んだんだけど、なんかいまひとつで自分の中では発展しなかった。
ただ「点子ちゃんとアントン」は表紙や挿絵がかわいかったので、図書館で借りて読んでみた。

訳が新訳のせいか古くさくなくてすいすい読めた(って児童文学だから当たり前)。
点子ちゃんはお金持ちの一風変わった娘、貧乏なアントン少年とちょっとしたお話が展開される。さすがに70年以上も前の作品なので目新しさはないけど、それぞれのキャラクターは現代の目から見ても違和感なく描かれている。「飛ぶ教室」よりもそれぞれのキャラクターは立っていると思った。
近年、「飛ぶ教室」同様映画になっているので、機会があれば見てみたい。

人は見た目が9割
竹内 一郎
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ケーハクなタイトルで完全スルーしてたんだけど、「王様のブランチ」かなにかで紹介されているのをみると、どうも身体をインターフェイスとして捉えていろいろ論じている内容のようで、俄然興味が出て読んでみた。

なるほど、たとえば僕は「偉い人」って体が大きい方がなりやすい、と思っているんだけど、それはやはりその体の大きさが無言の圧力を生みがちだからだと思う(たとえケンカなんて絶対しないとしても)。
そのように人間というか生物は「見た目」からは完全に逃れられない、では逆にそれを現実社会やドラマにおいて有効に使うにはどうしたらいいか?ってのがテーマ。

著者は演劇の脚本・演出や漫画の原作を書いてる人のようで、演出論としてもなかなか勉強になる一冊だった。
ただタイトルはキャッチー過ぎてどうかと思う。

一九七二—「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」
坪内 祐三
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ずっとハードカバー版を借りてて半分ぐらいまで読んでたんだけど、文庫になったので買って、ようやく読み終えることができた。
いやぁ、やっぱり面白い。僕は1973年生まれなんだけど、その頃にいろんな出来事があってそれは戦後から現在においての一つの分岐点だった、というのがよく分かる。
前半の連合赤軍事件〜あさま山荘事件、中盤の日本におけるロックの受容のされ方、後半の「ぴあ」創刊に関して、どれも読んでいてシームレスに話がすすんでいき、ひきこまれる。資料のあたり方も丁寧で説得力あり。

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