2006年5月5日金曜日

「転校生」

少し前に「時をかける少女」を見直したら無性に「転校生」が見たくなって、でもレンタルビデオ屋にはDVDがなく借りれず、どうしようかと思っていたらスカパー日本映画専門チャンネルで放送されてグッドタイミング。
転校生小林聡美 尾美としのり
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この映画は、子供の頃に偶然原作にあたる「おれがあいつであいつがおれで」という児童書を読んでいたので、初めて見た時は役者の年齢層が高いなぁという感じだった(原作は確か小学生。映画は高校生に見えるけど、中学生)。

原作の方はもうあまり覚えていないのでまた機会があれば読み直してみたいけど、映画ではある致命的な問題点がある。

それは、入れ替わる前の少女(小林聡美、めちゃくちゃ演技がうまい)が出番が短いくせにわりとおてんばに描かれているせいで、入れ替わったあとの少年(尾身としのり、こちらもうまい)が、その少女ではなく単にナヨナヨしたキャラに変貌した、というふうにしか見えないのだ。だから同時に女性の方は単にたくましくなった、というふうに見えてしまい、入れ替わったというよりそれぞれのメンタリティが変化した、という印象の方が強い。
この辺は実写映画の難しさなのかもしれないけど、この演出方針はちょっとどうかなぁと見るたびに思う。

けども、そんな欠点にもかかわらず、この映画はとても面白い。
その面白さはなんであるかこれまであまり意識していなかったけど、自分が思春期という時期を大きく過ぎた今、少し分かったような気がする。

そもそもこの話は、「幼なじみだった男の子と女の子が久しぶりに出会い、また分かれる」というプロットなわけだけども、幼なじみだった頃は男の子も女の子も性差がなかった、つまりある意味一心同体だったわけだ。ところが久しぶりに再会してみると、中学生ぐらいになっているものだからお互いに違和感がある。それが肉体が入れ替わることでより顕著になり、お互いに相手が変わってしまったことを知るのである。

つまりこれは、意識的にも肉体的にも未分化であった2人が実はもうそれぞれ1人なんだ、ということを強く意識するビルディングロマンなわけで、だからこそ物語的に必ず最後に2人は離ればなれにならなければならないのだ。少年が転校しなくてはならないのは、単に物語的にタイムリミットを設定して緊張感を持続させるためだけではない。

少年が自分の8ミリカメラごしに、少女に「さよならオレ」とつぶやきプツンと切れるフィルム、というラストの演出は、まさに「幼年期の終わり」を感じさせる、素晴らしい出来になっていると思う。


2 件のコメント:

  1. 『転校生』はいいですよねえ。ボクも大好きです。ラストの8ミリ映像で、最後の最後に小林聡美(ご指摘のように本当に巧いですよね)が振り向く一瞬ズームレンズでズームされるのも、気持ちが良く現されていて大好きです。また、いつか書かねばならないことなんですが、入れ替わってから家に帰ってきた小林聡美(中身は一夫)が晩御飯を食べる時の「美味そさ」!! 実際に色んなものを口に放り込む食べ方も素晴らしいんですが、あの時の兄貴達のリアクションが素晴らしいんですよね(生唾飲み込む)。芝居が巧いと言えば樹木希林のお母さんも圧巻ですよね。一美(中身は一夫)が鬱陶しくなったときの邪険の仕方なんかもう……

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  2. やっぱりす一さんも好きでしたか!
    ラスト、いいですよね。
    ちなみに僕が毎回気になるシーンは、唯一彼らが入れ替わったことに気づく女の子の、指をパチンパチンとならすしぐさがすごいぎこちないことです(笑)。
    それにしても細田守監督の「時をかける少女」は楽しみですよね。原作とはかなり違うみたいですけど。
    細田監督といえば、こないだ「ONE PIECE —オマツリ男爵と秘密の島—」を見ました。センスのいい画面構成や作画・色使いなど、主に絵に関して細田節が全開で(オリジナルキャラクターがいつものデザインで笑えた)、「ONE PIECE」自体が全然好きじゃないんですけど、けっこう楽しめました。
    いや、逆に「ONE PIECE」に思い入れがないから単独作品として楽しめたのかもしれませんね。

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