比較的珍しいところでは、「ショージ君の青春記」という、東海林さだおが漫画家になるまでをつづった本がかなり面白かったが(残念ながら絶版)、今回読んだこの本もかなりよかった。
ひとりずもう (小学館文庫)

「ちびまる子ちゃん」がテレビ放映20周年という事実に軽くクラクラするんだけども、原作マンガはもちろん、エッセイ初期三部作(「もものかんづめ」「さるのこしかけ」「たいのおかしら」)、子供時代を書いたシリーズ(あのころ」「まる子だった」「ももこの話」←これら、つなげると1つの文章になってることに今気づいた)あたりは大変楽しんで読んだ記憶があるんだけど、その後の生活雑記のようなエッセイは正直ちょっと……という感じで、かなりごぶさただった。
「ひとりずもう」は、彼女の中学生~高校生、そして漫画家になるエピソードということで、これはもしや?と思い手に取ったらなんかオモシロ本オーラが出てるので、購入して読み始めたら一気に読んでしまった。
中学、高校生のころのイヤに奥手だったエピソードも面白いんだけど、最後の方で漫画家になる決意をし、いわゆる少女漫画には一度挫折するも、エッセイ風のマンガを描けばいいのだ!とひらめき、努力の末デビューに至る部分はかなり感動した。
とくに家族に「無理だ」といわれても、家族が自分の人生を保証してくれるわけではないと無視したり、それまでのぐうたらで、自分という人間を捉えきれてなかった彼女の様子からは想像できない固い決意を感じられ、この本の読後感をかなり変えてくれる。
面白いのは、再度漫画家に挑戦するのが、学校で作文をほめられたのがきっかけだったこと。
当時は今と違って女性が書くライトエッセイも少なかったし、エッセイ風のマンガというのも少なかったと思う。マンガ、イラスト、エッセイを行き来する作家、というカテゴリを生み出しのは、そうか、さくらももこだったのか。
そのアイディアを思いついたときの描写もとても印象的だ。
いやぁ、正直「もうさくらももこのエッセイなんて面白くないよね」と思ってたからやられた。この本はいい。
幼少期の頃を書いた「おんぶにだっこ」と、今後出る予定のもう一冊で三部作になるそうだけど、楽しみ。
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ところで、「りぼんの乙女ちっくの正統な後継者はさくらももこ」と書いてたのは大塚英志だったと思うけど、さくらももこ自身が生み出すものが乙女ちっくなのではなく(もちろんそういうテイストはかなりあるんだけど)、「乙女ちっく」なものに憧れる女子の心理を描かせると右に出る者はいない、という意味での後継者なのではないか。
この本を読むと、いかに彼女が「乙女ちっく」なものに憧れていたかがイヤというほど分かる。メンタリティはかなり乙女だ。ただし、それを体現しようとするとどうしようもない状態になりまさに「ひとりずもう」になりがちなのは、彼女の天分なんだろう。
素晴らしい。