2009年7月27日月曜日

売野の夏

夏の海に行くと、自分が小・中学生だった1984年~1986年頃の頃をよく思い出す。
その時の心の中のBGMは作詞家・売野雅勇(うりのまさお)の手による曲が多いのは、その頃彼が売れっ子だっただけでなくてやはり夏の海との相性がいいからなのだろうか。

歌謡曲の作詞家というと、最近では松本隆や阿久悠、秋元康あたりまでは一般に注目されたりコンピレーションが出たりするけど、売野雅勇クラスまではいかないようで、残念。
DJ OZMAが、BRUTUS 2008/9/1号「ニホン語で歌おう!」の「「男が萌える」歌詞を、とことん考えた。」という田中知之(FPM)との対談で
「もうひとつ、長いこと自分が一番好きな作詞家は松本隆先生だと信じて疑わなかったのですが、こと自分がグッとくる女の子モノの歌詞に関しては、売野雅勇先生の作品が多かったんです。」
「一行ごとに歌詞が完成されているし、全部がキャッチフレーズになりうるところもスゴイ。」
と語っているけど、こうして名前を取り上げられること自体が珍しいと思う。

そんなこともあって作詞家・売野雅勇への関心が高まっていき、彼に関する数少ない著書

プールサイドに3Bとステドラーをくれ―売野雅勇の世界
田中 良明
401009821X


をAmazonマーケットプレイスで購入して読了。
気取っているタイトルに負けず内容も今読むとかなり苦笑してしまう。
それでも売野雅勇という人がどういう仕事をしたかはつかみやすい。しかも格別その詞が好き、というわけではないのにやたらと好きな曲が多いのに改めて驚く。

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売野雅勇はDJ OZMAが好むだけあって(先の対談でも荻野目洋子「さよならの果実たち」を取り上げていた)、やや不良性が高い世界観を得意としていた。

・中森明菜「少女A」「1/2の神話」「禁区」「十戒 (1984) 」といったツッパリイメージの曲
・チェッカーズの初期作品のほとんど
・イメチェン後の河合奈保子作品
・ブレイク後の荻野目洋子
・本田美奈子(「殺意のバカンス」、「好きと言いなさい」)

がそういった作品群。

一方、

・吉川晃司「サヨナラは八月のララバイ」「ラ・ヴィアンローズ」
・稲垣潤一「夏のクラクション」「思い出のビーチクラブ」
・杉山清貴「水の中のAnswer」「最後のHoly Night」
・1986 OMEGA TRIBE、カルロス・トシキ&オメガトライブの作品
・菊池桃子の一連の作品

などなど、80年代独特のちょっと大人な世界も得意としていた。イラストでいうと永井博と鈴木英人が似合うような。
個人的には、このあたりの歌詞世界がかなりクる。
歌われている世界が、当時本当にあった風景なのか、単なる彼や時代が生み出したイメージでしかないのかはよく分からないけど、その頃の若者たちが憧れをもっていたり逆に嫌いだったり、ともかくもその存在を感じていたのは確かだと思う。

他にも井上大輔とのコンビによる

・郷ひろみ「2億4千万の瞳~エキゾチック・ジャパン~」
・ラッツ&スター「め組のひと」
・シブがき隊「挑発∞」「サムライ・ニッポン」、「アッパレ!フジヤマ」(後藤次利との「喝!」、林哲司との大人路線「KILL」も売野作品)

といったやや飛び道具的な作品、

・近藤真彦の「一番野郎」「ケジメなさい」「大将」といった和物路線

アニメ作品でも、劇場版「タッチ」主題歌

・ラフ&レディ「背番号のないエース」
・ブレッド&バター「さよならの贈り物」

筒美京平と組んだ

・MIO「エルガイム ~Time for L・GAIM~」
・鮎川麻弥「風のノー・リプライ」(アニメ「重戦機エルガイム」オープニングテーマ)

・森口博子「水の星へ愛をこめて(アニメ「機動戦士Ζガンダム」オープニングテーマ)」
といったサンライズの作品、
とくに1984年のアニメソングコンピレーションCDでは

・「ガラスの仮面」「パープル・ライト」(アニメ「ガラスの仮面」)
・陣内孝則「ハートブレイクCrossin'」「サヨナラを言わないでくれ」(アニメ「ふたり鷹」)
・小島恵理「ON THE WING」(アニメ「レンズマン」)

など大活躍。

やはり
「1984年~1986年の夏の一部分は、売野雅勇が作った」
と断言したい。


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